牡丹にくらべて芍薬は、その人気度においてどうも分が悪い。牡丹のゴージャスな美しさを否定はしないが、芍薬の高貴な姿は心にしみ込む。

芍薬 学名Paeonia lactiflora

なつかしい故人のために、白い芍薬を手向けたいと思ったが、このあたりの花屋にはない。なら自分で栽培するしかないと決心した。赤い芽立ちの頃から毎日美しい姿のイメージを思い描いて大切に育てた。

ちいさな蕾が出、やがて白い花びらが開きだす。「おお純粋なる矛盾よ」と讃えられたリルケのバラのように、芍薬の小さな蕾の内部から無尽蔵と思えるほど溢れ出てくる白い花びらの美しさに息をのむ。蕾の直径は2センチほど、花びらは86〜90枚。