ぼくの家の門は開けっぴろげ。直接道路に続いているから、野良犬が勝手に入り込んではぼくの聖域を荒らす。こわくておちおち庭を散策もできない。
ある日里親が、門扉をつけようかと、ぼくに相談する。ぼくとしてはテリトリーの安全保障上、文句なく賛成する。そして、アコーディオン門扉がついた。野良猫なら出入自由だが、いつも通るセントバーナードはくぐれまい。一安心だ。隙間から首を出して大いに見聞を広めよう。体験学習は大切。
初日は腰がひけて鼻先ばかり出してみた。うん、これが世間の風というものか。次の日は頭を全部出してみる。180度の視角で、ぐっと見聞が広がる。次の日はしっぽだけ門の内に残して全身せり出した。が、世間の荒波が一度に押し寄せてくる。パニック。もっと肝をきたえなくっちゃ。