日々是好日 |
「春の女神フローラのできあがり」と里親の不吉な声がする。昼寝していたぼくの頭が重い。何かのっかかっている。急いで振り落とすと、庭のデイジーやイフェイオンで作った花輪である。毎朝ぼくが里親の頭をやさしく叩いて起こすと、文句を言うのに、ぼくの貴重な昼寝の時間をじゃまするのは平気なのだ。それに「女神」とは聞き捨てならない。どうせなら、青春の神アポロンとでもいってもらいたい。ぼくは男の子だい。
|
|
|
|
アポロンのごとき美男子のぼくだが、歳月猫を待たずで、とうとう8歳になってしまった。8年前、この家の床下で泣きわめいた時から、8個のバースディケーキを食べたことになる。おかげで分別ある猫となったぼくは、昔のように里親を悩ますイタズラはしない。意図的には。
しかし結果としてそうなることはよくある。ぼくのせいじゃない。先日、ジャンプの練習のため洗濯機の上に飛び乗ったら、だらしなくもフタが開いていた。ぼくは中のシーツの山に転がり落ち、脚をとられて脱出不能。しかたないので、SOS の「ウギャー」を発信してから、体力温存のため寝ることにした。里親は意外とすばやく救出に現れたが、「洗濯物が毛だらけになった」と文句タラタラ。
|
|
窯出しの日、里親が駄作をならべて撮影する。駄作をいかに傑作に見せかけるか、虚栄心があれこれ背景用の色紙用紙を選ばせる。次々と大きな色紙が丸まって投げ出される。それを見ていて、ぼくは俄然ハックルベリだか、リビア山猫の気分になる。赤い紙のなかにひそんで、土管ごっこ。そういや、土管ってもうあんまり野原に積まれてないよね。ちょっと遠い目。
|
|
|
|
大阪のお遊び係が帰ってきたのに、仕事を放りだして、パソコン仕事ばかり。「遊んでよ」無視される。いらいらする。ぼくとその黒いヤツとどっちがいいの。
お遊び係が立ったスキにキーボードに飛び乗り、思い切りひっかいてやる。意外とぼろくて、@のキーがとんじゃう。悲鳴。びっくりして逃げだす。懸命にキーをもとに戻そうとするお遊び係は涙目だ。ちょっと反省。だって遊べないもん。でもあの爪研ぎの感触は忘れられない。だからちゃんと、パソコンも洗濯機もフタはしめとくようにね。
|
|
|
BACK |