まお、詩人になる


ぼくの寝場所

高松の最高気温36度7分。館林市では37度7分だと。この暑さでぼくの美しい毛皮もツヤが失くなった。里親どもは、「少し毛を刈ったらどうだろう」と、不穏な話をしている。

あまりの暑さに、ぼくは熟慮の末、暑さの日中はひたすら眠り、少し涼しい夜中に活動することにした。「夜に動くもの」。単にぼく本来の習性に戻るだけだけれどね。それじゃ、ミもフタもないから、人間が無思想に寝こけている「夜を守るもの」ということにしよう。中国の現代詩人北島(ペイタオ)が、「詩人とは夜を守るもの」、世界と人間に巣くう深い闇を見つめるものだといっている。とすれば、当然ぼくは詩人ということになる。

先だって、里親が月桂冠らしきものをかぶり、 バラライカをかかえ、旅の日のゲーテ風のマントを着た猫のフィギュアを作った。

猫の吟遊詩人トルバドゥールのつもりらしいが、歴史的考証はでたらめ。妄想の世界である。

まあ「夜をまもるもの」であるぼくの真実を里親は知らないので、しかたがない。なにしろ夜はひたすら寝る散文的な人で、たまに眠れないと不機嫌になる。ぼくはといえば、昼の里親がどうあれ、どこに快適な寝場所があるか、それが問題だ。ぼくの苦労を見てほしい。