まおの冬暦

ぼくは人間文明のなかで暮らし、その恩恵を受けてはいるが、誇り高い野生の魂は今も失っていない。しかしぼくがホームレスになったとき、ぼくは果たして生きていけるか自信はない。佐渡で人間に育てられたトキが野生にかえされたが、結局タヌキか何かに喰われてしまったという。過酷な自然の運命だと人間どもは嘆いているが、ぼくはいったんその生に干渉した人間は最後まで責任を負うべきだと思う。野生の呼び声は決して優しくはないのだ。

いずれ遠からず人間もその運命共同体たる猫族も滅ぶ。人間がひのまま地球を壊し続けるならば。ぼくが毎朝愛読する人間の新聞によれば、地球温暖化阻止を話し合うCOP14も結局、何も決められず、明日は明日の風が吹くとでも思っているのだろう。それでは遅い。ぼくは焦燥の余り、パルプの砂をかき回し、温かい家のなかを駆け回る。

この冬もまた暖かい。寒がりなぼくにはとってもうれしいけど、地球が病んで発熱しているかと思うと、うれしさも半減する。やっぱり冬はきっぱりと来なくちゃね。

人間とちがって、ぼくはぼくのこたつの上に乗る。人間のこたつでは中にもぐる。