秋の猫
9月のまお
山形土産に紅花染めのハンカチをもらった。早速首にまいて、バンダナとしゃれる。おしゃれなはずだが、なんだかフロシキ包みを首にくくりつけた行商人のような風情。ぼくだって行商人くらい知ってる。ぼくにおやつやおもちゃを運んでくれるクロネコやペリカンのおじさんのことでしょ。



歯のはなし
ぼくの白く輝いていた日々は、もう失われてしまった。といっても、ロマンチックな話じゃなくて、ぼくの歯の輝き。近頃、黄色くなって、おまけに切れ味まで鈍ったようだ。その証拠に、バトルしても、里親の無礼な手を血祭りにあげることができず残念。ということで、

「まおちゃん、田村先生に歯石を取ってもらいましょ」歯石をとるのは痛い。口の中が血だらけになるし、すうすうするし、まっぴらごめんだ。ベットの下に逃げる。
「じゃ、ハミガキしましょう」ハブラシが折れるほど噛んでやる。ゲーしそう。
「まおちゃん、お口のうがいですよ」このオーラル・クリーニング・ジェルとかいうもの、歯石防止とかで最近の里親のブーム。でもくさいし青いし。ふんと横を向いていたら、羽がいじめにされ、口の中に青いジェルをたらしこまれた。猫のブライドずたずた。
「じゃ、ハミガキガムはどう」フンフン、バリバリ、ゴックン。この猫用ハミガキ最終兵器はすごい。おいしい。もっと、もっと、ハミガキしたい。ぼくの目は輝き、足はいそいそと食料庫へ向かう。座り込んでとっておきの甘えた声で訴えたが、無情な里親がいうには「ガムは一日一つだけ」「こんなタラくさい、フみたいなもん。どこがおいしいの」。人間の味覚は貧しい。

歯磨きジェルと歯磨きガム(別名、フ) 

地球温暖化対策
この夏は猫にはとりわけ苦しい季節だった。本当に地球は焦げている。北極海の氷が溶け始め、今まで不可能だった北極経由の船が運航して、アジア・アメリカ・ヨーロッパを結べるとか。シロクマくんがかわいそう。人間がこれ以上地球をあぶりたてると、猫族だって危ない。だから地球温暖化防止のために、ぼくもクーラーをなるべくひかえて努力する。その決意の実行は以下の通り。
1 ぐったり自然体。
2 から風呂の冷たい底にはりつく、平蜘蛛体。
3 里親の駄作、メダカも愛想をつかして見捨ててしまった陶器の大鉢に入る、侘び茶体。
エコロジーは猫にも英雄的な忍耐を要求する。

9月25日。中秋名月。ほんの少し涼しくなったような気がする。うれしい。ぼくの大好きなおこたの冬がもうすぐだ。