「私の耳はGPS」と里親は自慢するが、その耳をまんまとだましたときは何とも気持いい。
「近頃のまおは世界への関心がとぼしくなったらしい。それは老化のはじまりですよ。ほら、庭で鳥が鳴いているのに、寝ていてもいいの。あの鳥、モーツァルトのグランパルティータの第3楽章のオーボエを吹いている。レンジャクかな。でも、この季節、レンジャクが日本にいるわけないし。」
ぼくは里親から奪ったロッキングチェアの上で丸くなりながら、薄目を開けて里親自慢の耳を見る。天上の音楽を奏でるぼくのいびきを里親が理解することはまずなかろうから、しばらく寝た振りして、オーボエのいびきを続けよう。