裏庭に勝手に棲みついていたツユクサが、2004年夏の高潮で枯れてしまった。道端、荒れ地、どこにでも見られる一年草の雑草だが、その花の色と形がクジャクの頭のように華麗で美しい。緑色のガクが内切して半円形の包を作り、そこから青紫色の丸い花びらが2枚、白く小さな細い花びらが1枚。おしべの内2本は花糸が長く伸びて、黄色の丁字形の葯(ヤク)をつける。雑草でも美しいものには寛容だから、またツユクサが欲しくなった。

だがこの町には道端も荒れ地もないし、と思案していたら、今年高潮災害から奇跡の復活をとげた不死身のツユクサを発見。抱きしめたいほど感動した。

ツユクサ、露草、『万葉集』では鴨頭草(つきくさ)、真鴨の頭の色と同じ花色だから。

鴨頭草のかれる命にある人を いかに知りてか 後も逢はむといふ(『万葉集』巻11)

また着草(つきくさ)ともいう。青い花汁がよく着くので、摺染めしたらしいから。

大化の改新で定められた官位に従って、高位の官人の青い衣料の需要が増え、大津京の周辺でツユクサの栽培が盛んになったという。その後京都で友禅染めが始まると、その下絵描きとして水ですぐ脱色するツユクサの花汁が用いられた。小さな花から大量の青汁を取り、青花紙にするのは大変だ。そこで小さなツユクサを改良して、花びらがツユクサの4倍もあるオオボウシバナ(青花)を作り出した。青い花には薬効もある。高血圧・下痢・発熱などに効くと。

そこで「草津あおばな館」にアクセスして、大いに青花の知識を仕入れ、ついでに青花の苗を申し込む。やがて届いた、この青花。その姿のたくましさに圧倒された。ツユクサの楚々とした風情はどうなった。でもともかくも庭に落ち着いて、六月下旬には径4センチの大きな見事な花が咲いた。朝開いて昼過ぎにはしぼむので、収穫してすぐにもんで汁を取り、筆で和紙に塗りつけ、青花紙まがいを製作。陶器の下絵描きに活用する予定。詳しくは、草津あおばなaobana.comへどうぞ。

次回はカンピョウ、本物の夕顔です。