3月上旬、近くで「ジャパン・フラワーフェスティバル」が開かれた。フラワーとくれば豪華絢爛と思いこんでいたが、この催しのコンセプトはどうやら、日本の庭園。庭園にも、ガーデニングにも心得のないものとしては感銘のしようもなかったが、松江市のブースには心ひかれた。竹のある庭に面した小座敷にポツンと置かれた古トランク。フェスティバルの騒音が消え、そこだけしんとして、小泉八雲の孤独な魂の遍歴が心うつ。

フェスティバルで、島根の大根島の白い牡丹を買った。

花開花落二十日

一城之人皆若狂 白楽天

一鉢の牡丹だが、四月上旬花が開くと、唐代の長安人が狂ったのもわからなくはないほど、美しい。まさに、花王、花神、百花王だ。ところで立派な王様には名宰相が要る。花王牡丹を支えるのは、花宰芍薬。世界一を誇る大根島の牡丹苗も多くは芍薬を台木として接ぎ木される。牡丹が散ると、やがて芍薬が咲き出す。春の庭は人をして静心を失わせてしまう。

散りて後おもかげにたつ牡丹かな 蕪村