お花畑図鑑 シャクヤク

2006年5月

ボタン科の多年草。学名Paeonia lactiflora。えびす草・えびす薬などの異名あり。アジア大陸北東部の原産で日本には中国から伝来した。ボタンと同属らしいが、あちらは「花王」で木。こちらは「花相」で草。ボタンの台木としても使用される。根っこは生薬で「芍薬」。消炎・鎮痛・抗菌・止血・抗けいれん作用がある。927年の『延喜式』に、山城・相模・武蔵などから典薬寮に貢進され、平安時代には漢詩のなかで花がうたわれている。名古屋城の杉戸にはシャクヤクの花が描かれるなど、桃山時代以降は花が描かれるようになっている。江戸時代には「茶花」として鑑賞され、熊本藩士の育種した「肥後六花」の一つでもある。

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」というのは美人の形容だが、たしかに豪華ななかにもきりりと気品がある花だ。茎がまっすぐ伸びるので、「立てば」になるらしい。小さな拳のようなつぼみはゆっくりとほどけ、信じられないほど豊かな花弁が盛りあがってくる。蕪村「芍薬に紙魚うち払ふ窓の前」


2013年5月