お花畑図鑑 チューリップ

ユリ科チューリップ属。原産地は北緯40度前後のトルコから中央アジアにかけての地域の高地。草丈も花も小型の原種系チューリップが多数生息している。旧約聖書に出てくる「シャロンの薔薇」は、野生種の深紅のツリバ・アゲネンシスとする説もある。

天山山脈西北部から西に移動して1299年にイスラム帝国を樹立したオスマン・トルコの人々は故郷の花であるチューリップを愛した。15世紀半ばには本格的栽培が始まり、ユリ咲きなど1000種にのぼる園芸種を創出した。18世紀にはアフメット3世下チューリップは熱狂的なブームとなった。ヨーロッパへは、1554年にオーストリア神聖ローマ帝国から派遣された駐トルコ大使ド・ブスベックによって伝えられた。彼がチューリップについて尋ねたところ、通訳はその形がターバンに似ていることから、ターバンのトルコ語トゥルバンドで形容して答えたのを、花の名前と勘違いしたことから、チューリップの名前が生まれたといわれている。オランダでは1634年から37年の間、歴史上有名なチューリップ狂時代となった。

日本へは文政11年(1828)に本草学者の岩崎常正がドイツのウェインマンの花譜から「鬱金香、チュリッパ」として『本草図譜』に転載した。球根は文久2年(1863)にフランスからヒアシンスと共にもたらされ、一ツ橋にあった幕府の物産所に植えられた。本格的な栽培は大正8年(1918)に東砺波郡庄下村(現砺波市)で開始された。

アンジェリケ