お花畑図鑑 アネモネ

花弁のあたりが豪奢な春の花。つぼみの時には濃厚でしっとりしているが、だんだんはかなくなり、ぱらぱらと散る。
2012  

キンポウゲ科アネモネ属。その仲間は世界に約100種あり広く分布し、日本にもしゅうめいぎくなど12種が自生する。一般的にアネモネと呼ばれるのは、地中海沿岸原産の一重のAnemone coronariaとその園芸種である。「アネモネ」はギリシャ語の「風」。イギリスでは「風の花」、ドイツでは「小さな風の薔薇」といわれる。

春を告げるこの花は、ギリシャ神話に登場する西風の神ゼフィロスが大地に息を吹きかけて咲かせるとか。ゼフィロスが妻に仕えるアネモネというニンフに恋して、放逐されたアネモネを花に変えたのである。また美少年アドニスの血からヴィーナスが咲かせた花とも。アドニスはよみがえる春の象徴で、フェニキア起源のアドニス崇拝があり、毎年春になるとアドニスが地上に戻る祭典が行われた。

コロナリアは花冠の意味。これはローマ人がヴィーナスの花として神殿にささげるとともに、酒宴の時に花冠にしたり死者の冠にしたためである。

一方、古代エジプト以来病気のしるしともみなされていた。花がはきだす毒をすいこむと病気となると信じられていた時代もある。根の絞り汁が薬に使われたり、アラブの民間療法では腫瘍や結核などに用いられたもしたのだが。

聖書に出てくる「野の百合」は、このコロナリアともいわれている。コロナリアは12世紀の第二次十字軍遠征頃、聖地エルサレムの土とともにイタリアにもたらされた。

花言葉は「消えた希望」「見捨てられた者」など悲しいが、「辛抱」「待望」といった意味もある。

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